Japanische Klassiker mit Furigana
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ひゃくしんのふ
百唇の譜
野村 胡堂
Lesen Sie 百唇の譜 (ひゃくしんのふ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.209 Zeichen · 25 Bildschirme
「いえいえあの立派な良平様のお心持を考えると、私は涙がこぼれます――あんな気高い、立派な方と、こんなに汚れた私が何うして一緒になれましょう。もうそんな事は言っておくれでない、強いて言われると、私は淵川へ身でも投げて死んで仕舞わなければならない」
斯う言われると、乳母は二の句が続けません。
一方当主に直った良平は、真弓を妹のように愛撫して、その心持を傷けないように力め乍ら、
「余計なことを言って、真弓殿を苦しめてはいけない」
事毎にそう言って乳母をたしなめるのでした。
千代之助の身を持ち崩した浅ましい姿が、良平の眼に触れないでもありません。ことに、役者になって、元の名を其儘猿若町に顔を晒した時は、知ってるほどの者は、歯噛みをして憤りましたが腕一本斬られた敵同志の良平は、世の後ろ指を背中に感じ乍らも、それを何うしようと言う様子も見せませんでした。
一度、浅草の観音様の門前で、柴羽織の千代之助と避けもかわしもならず、ハタと顔を合わせたことがありました。
良平はさすがに顔色を変えましたが、次の瞬間には左り気ない様子で、足を淀ませもせずにスラスラと通り過ぎました。