Japanische Klassiker mit Furigana
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わたしのかったいぬ
私の飼った犬
斉藤 弘吉
Lesen Sie 私の飼った犬 (わたしのかったいぬ) von 斉藤 弘吉 (さいとうひろきち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.083 Zeichen · 16 Bildschirme
夕方になって、H家のお手伝いさんが呼びに来ると“松”はその足音で縁の下にかくれ、小さくなって息を殺しているのです。家内が「松ちゃん帰ってまたあすおいで」と声をかけると、さもさびしそうにしおしおと出てきて、お手伝いさんの後について帰って行くのでした。H氏夫妻がいくらごちそうしてかわいがっても、私の家に通うのをとめることができませんでした。
そのうちに家内が病臥するようになりました。“松”は床の下にはいっては、家内の寝ているちょうどマクラの下にすわっているのです。家内が“松”と呼ぶとカタカタと尾を振る音が聞こえるのです。寝室を変えると“松”もその下に移ってすわっています。時々出てきては、くつぬぎの石の上に乗り、縁側に前足をかけて、家内の寝ている姿をのぞき、また床の下へはいって行くのでした。
“松”が病死したとき、私はその死体をもらいうけて全身の骨格を私の研究資料にしました。
“松”の死後一年余たって家内も病死してしまいました。私は、家内の愛用していた茶入れの中に家内の歯と松の歯とを一緒に納めて、墓に入れてやりました。いまでもきっと毎日お墓の中で仲よくしていることでしょう。