Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
彼も一部将として、とうに赤坂城の武者溜りの内に詰め、いつでもと、出陣を待機していた一員なのである。
が今。正季のことづてを聞いたので、彼はほどちかい水分の御本屋へさっそく馬をとばして行った。
そして、爺の左近へ、
「元成でございますが」
というと、爺もすでに、
「お待ちかねでおられます。さ、さ、そのまま」
と、取次もなく、すぐ正成のいる広書院へみちびいた。
その気配に、内から、
「治郎左か」
「はい」
「おくへ来てくれ。ここでは広すぎる」
と書院の横へ、正成の声が先に出て行った。渡りの板をわたる時の、暗いなかでの掛樋の水音が寒々しい。そこから一だん踏むと茶堂めいた小部屋があった。灯一ツ、夏隣りの湿気の多い夜気の中にゆらめいていて、もひとり誰か、先にいて、坐っていた。
卯木であった。
卯木もともに呼ばれていたのだろうか。元成は、何とはなくはっとした。おなじように、良人を見た妻のひとみも静かな胸騒ぎを彼にみせた。
が、元成は、妻と並んでも妻は目のうちにないようなかたい行儀で。
「何の御用でございましょうか。龍泉どのからお呼びと聞いて、さっそく駈けまいってござりますが」