Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
「それらの者は、かつて金剛千早の日にも、共に籠城した輩です。いくさに耐えぬほどな不具でも病気でもないと言い張り、どう諭しても、ききいれません。このたびこそは、わがおやかたにも決死の御出陣とうかがわれる。その戦にお供がならぬほどなら、ここで刺しちがえて死ぬなどと申しおるようなわけで」
「さまでに」
と、正成は、うるみ声で、兵の簿にあたまを垂れた。そうした純烈なものを知ると断腸の責めに衝かれるらしい。謝する言葉もないふうだった。が、そのまま了現の手へ、簿を返して、
「兵数は、意外に多い。多すぎる。明朝、あらためて一考しよう」
と、言った。
陣務に次ぐ陣務で、幕僚の出入りがつづいていたせいか、正季はまだ姿をみせていなかった。――まだといっても、はや時刻は夜半近い。――木々の雫の音に、青葉蔭もいつか冷え冷えとし、にぶい月明りの下には兵も馬も深い眠りのひそまりにおちていた。
正成も横になりかけた。
するとまた誰か、陣幕の外へ来てたたずんだ気配である。五、六名の武者らしかった。しかし内へ入って来たのは、ただ一人の小冠者の影であった。遠くにかしこまって、手をつかえている。