Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme

Aozora Bunko

「母はそなたが父を追ってゆくことを、承知したのか」

「はい」

「そうではなかろう。正季がしいて説きつけたのであろう。あの正季の一途を以て」

「ですが、母ぎみも、それほどまでに正行がいうならばと、お泣きにはなりましたけれど、しまいにはおこころよく、初陣なればと、この具足やら身支度も、お手ずから私に着せてくださいました。……そして仰っしゃるには、そなたも十五、年に不足はない。たって父ぎみに付いて行くほどなら、父ぎみの御最期もよう見とどけよ。父のお名をはずかしめるなと」

「久子までが」

「え」

「言ったのか」

「はい……」

父の大きな吐息が正行にもこのとき耳にわかる気がした。それほど正成の眉は、子にとって何かむずかしいものに見え、かたわらの扇をとって、藪蚊を追い、その半開きの扇のさきで、

「正行」

と、招いていたのに、すぐそのそばへ寄って行くのも、恐いように思われた。

「もそっと、こっちへ来い。父のそばへ」

「はい」

「もっと、寄れ」

「は」

「正行……」

父の大きな手が、肩に乗った重さに、正行は体じゅうがじんと熱くなった。また正成の手は、まだ成人の骨格をさえしていない少年の肩の小ささを感じながら、その白紙のままといっていい純真な烏帽子顔にある黒い二つのひとみを、飽かぬほど、見つめるのだった。