Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
「よく来たのう、正行。……それはうれしい。だが、連れては行かれん。そなたは明朝、河内へ帰れ」
「えっ。――帰らねばなりませんか」
正行は、父の腕に絡んだ。
しがみついて。
「なぜです。なぜ正行は、お父上の戦について行っては」
「いけない」
「ど、どうしてです」
「河内を立つ朝、よく言っておいたはず」
「でも、こんどは、お父上も生きては還るまい御戦。死を決めての御出陣だと聞きました」
「たれから」
「叔父ぎみが。また母ぎみもそのようなお覚悟のご容子です。おなじ初陣なら、お父上と一つ陣で。おなじ死ぬなら、お父上と共に死にとうございます」
正行は、泣きもしていなかった。
この少年には、死がどういうものであるか、死がわかるほど、生もわかっていなかった。それだけに多感で純白な心は、父母の姿やら周囲の悲壮な戦の門出にその激血をつきつめられているのらしい。生き物の哀しさを、正成はこの子に見ずにいられなかった。
「よしよし、よく言った……」
思いのほか、父の言がこう優しかったので、正行は、甘え心が出て、どっと、いっぺんに涙をこぼした。両手で顔をおおったとおもうと、声をもらしてしゃくりあげた。