Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
「はや、敵の先手は、部落のそとまで、近々と迫り寄っておりますぞ!」
「いや、それは先手の騎馬、部落の口を、西ひがしへ、駈けちごうているだけのこと!」
「こちらに計りあるものと恐れてか、べつに、忍び忍び、這い近づいて来るわずかな兵が見えるばかり……」
「火の手は、部落はずれの一軒家が、いま煙をあげた様子」
「しかしやや遠くは、物々し大軍です。生田の上から、湊川のかみに至るまで、およそ二万ぐらい、雲霞のようにここを遠巻きに、徐々、近づきつつありまする!」
やがて、それらの声も、ぷつんと断れた。
シュシュッと、同時に、矢うなりの響きがどこかを走ッてゆく。堂の屋根や附近に矢が突きささッたようでもあった。これはどこか、物見の目もとどかぬ至近距離にまで、敵の兵がすでに潜り込んできた証拠と、誰の肌にも突き刺さるような感があった。
「正季、あれを見い。何とも赤い日輪だなあ」
「まこと」
「静かだ、じつに静か」
「ふしぎです、敵の大軍が、なぜこんなにも、念入りな大事をとって、攻めかかって来ないのか」
「網の中の魚だ、しかも大魚と、たのしんでいるのかもしれぬ、敵はな」
「尊氏でしょう、這奴の嗜虐、やりおりそうなことではあります」