Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(四) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 229.324 Zeichen · 458 Bildschirme

Aozora Bunko

「……検めてみましょう」

やがて覚一が、膝の琵琶を、そっと横へおきだしたので、彼女はあわてて。

「およしっ。覚一」

「でも、気にかかるではありませんか。気味がわるい」

「ですから、怪我でもするといけないもの。ひょっと盗人でもあったら……」

「盗賊ならなお心配はいりません。欲しい物を持って行かせればいいのです。お母あさん、紙燭をともしてください。そして私の手に持たせてください」

「だって、そなたは盲なのに」

「私には無用ですが、床下に潜んでいる者が不覚な狼狽をせぬように明りをみせてやるのです。ご心配なされますな」

覚一はまもなく、小さい紙燭の灯を片手に、廊の簾の外へ、足さぐりで出て行った。

朽ちかけた欄干の下は、ほそ谷川の水音だった。覚一のつま先と片手の指は、やがてつきあたりの杉戸に触れた。

とたんに、その明りのゆらめきを下で破って、カサッと、生き物でも刎ね飛ぶような音と共に、何か黒いものが、勢いよく崖をよぎって、どこかへ消えてなくなっていた。

「……? ア、逃げた」

覚一はほっと四山の冷気に顔を撫でられた。すぐ後ろへ、尼も寄りそって来ていたのである。動悸のしずまるのを母子はひとつに聴きすましていた。