Japanische Klassiker mit Furigana
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ききがきしょう
聞書抄
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 聞書抄 (ききがきしょう) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.821 Zeichen · 210 Bildschirme
依って法印から太閤に言上すると、男の子ならば害すべし、女は助けて取らせよと云う命令である。それを聞いて上人は安堵し、お命は申し受けましたから、お心やすく思し召せと云うのであったが、女房は嬉しそうな顔もせず、仰せは有難うござりますけれども、命を長らえておりましたとて、誰を頼み、何処に身を隠しましょう、矢張わたくしは夫の所へ参ります、たゞお願いは此処におります姫でござります、これは二歳になりますが、どうかお慈悲を持ちまして如何なる者にでもお預け下され、成人いたしましたらば跡を弔わせて下さりませと、正宗の守刀に黄金三百両を添えて出した。上人はいろ/\に女房を慰め、生き長らえて夫の後世を祈るのが誠の道であるからと教え諭したので、それなら様を変えさせて戴きますと、緑の髪を剃り落し、墨染の衣を着て、よもすがら念佛を称えていたが、明くる日の暁方、乳人が姫を抱きながら少しまどろんでいる隙に、守刀を取り出して心元に刺し通し、打俯しに俯して空しくなった。
挿絵
後に残された二歳の姫は、一説には貞安上人が乳人と共に引き取って、五条あたりの町家に預けて養育させたが、十五の歳に仕合わせがあってさる方に嫁ぎ、行く末富み栄えて暮したと云う。