Japanische Klassiker mit Furigana
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ききがきしょう
聞書抄
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 聞書抄 (ききがきしょう) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.821 Zeichen · 210 Bildschirme
その八
おまんの前と云うのが即ちその女で、関白の愛妾の一人となったが、唯それだけの関係なのである。つまり自分の妻を奪われた上に、その妻の父親が自分の家臣である故を以て、連累者と目されたのであるから、此のくらい馬鹿々々しい冤罪はない。吉長も義郷も、日頃三成から反感を持たれていた結果が、斯様な災難に遭ったものらしく、誰も三成に遠慮をして口出しをする者はなかったのであるが、事情が餘り気の毒なので、死罪だけは赦されて本領を没収された。
尚前項に書き洩らしたが、二尊院で切腹した熊谷大膳の辞世に云う、
哀れとも問ふ人ならで問ふべきか
嵯峨野ふみわけておくの古寺
又大雲院で自刃した白井備後が妻の辞世に云う、
心をも染めし衣のつまなれば
おなじ蓮の上にならはん
此の外、秀次が高野へ赴いた時、順礼や修験者に姿を窶して何処迄もと輿の跡を慕った者が多かったけれども、此処彼処で厳しく体を検められて追い返され、或る者は己が故郷へ帰り、或る者は五畿七道へ廻国の旅に上ったと云う。
その八
挿絵
秀次の末路、及びその家中の武士共の或は滅び、或は離散した状況は大体上記の如くであるが、順慶の藪原勾当は如何にしたかと云うのに、彼は七月八日の夜、秀次が聚楽を出た後でその公達や妻妾たちが徳永式部卿法印の館へ移されるのを見届けてから、伏見にある舊主の邸の門を叩い