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Japanische Klassiker mit Furigana

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ききがきしょう

聞書抄

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 聞書抄 (ききがきしょう) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.821 Zeichen · 210 Bildschirme

Aozora Bunko

その七

その七

順慶の心理を知るためには、彼が自ら眼球を破って真の盲人となるに至ったいきさつを明かにせねばならない。彼は云う、自分は舊主三成の意を迎えて罪なき関白を無理にも「謀叛人」にしてしまうべきか、舊主の心に逆らっても関白を庇い、引いては御台親子の幸福を計るべきかと迷い抜いた未、前者を選ぶことは何としても自分の良心が承知せず、さればとて舊主を裏切っては武士の一分がすたれることを慮って、孰方へも義理が立つように失明の手段を取ったのであると。畢竟、眼が見えるために夫人への同情がいよ/\強くなり、舊主へ義理を缺いてもと云う心が湧くのであるから、眼を潰すのが己れを守る最良の手段である、眼さえ見えねば、―――あの二人の婦人の姿さえ瞳に映らなくなれば、度を過ぎた同情も自らうすらぐであろうし、そうすることが、舊主に対する謝罪の意味にもなるのであると、彼はそう云う判断の下に決然たる行動を取ったのであった。

挿絵

挿絵

その両眼を抉った時期は、はっきり語っていないけれども、多分三成の邸へ呼ばれて怠慢の咎めを蒙った時、即ち文禄三年の秋を去ること餘り遠くない同じ年の冬か、四年の春頃であったろう。