Japanische Klassiker mit Furigana
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ききがきしょう
聞書抄
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 聞書抄 (ききがきしょう) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.821 Zeichen · 210 Bildschirme
気がいたします、今こそ思いあたりましたが、あの人は菩薩の化身なのです、あゝ云う女人の姿に顕われて無縁のわれらを救って下さる大慈大悲の御方便かと思いましたら、ひとしおあの頃のことが忘れがたく覚えます、あんなことでもなかったらどうして私たちは浮世をいとい、無為の楽しみを享けるのは憂いの中のよろこびであると云う道理を悟ることが出来ましょう、今日より後はきっと御同心いたします、返す/″\も嬉しゅう存じます、と、これもそう云って墨染の袖を濡らすのであった。
さてもう一人の僧を促して、発心の由来を承りたいと云うと、やはり年老いた入道で、衣の破れたのに七条の袈裟をかけて看経していたが、道行に痩せて顔の色は黒く、哀れなさまをしているものゝ、さすがに由緒ある人の果てなのであろう、まことの道者らしい風采で、こくり/\居眠りをしていたのを、「今度はあなたにお願いします」と云って揺り起して責めると、かた/″\の御発心の模様を伺いますのに、何とも申しようもありませぬ、前世の宿執かと思われます、私の遁世はそれ程の仔細がある訳ではなく、お話し申しても格別面白くもありませんが、二人の方がお話しになったのに私一人が申し上げない