Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ききがきしょう

聞書抄

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 聞書抄 (ききがきしょう) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.821 Zeichen · 210 Bildschirme

Aozora Bunko

のです。

見るたびに涙ぞまさる玉手箱

ふたおや共になしと思へば

玉手箱蓋と懸子の黒髪を

いふ方もなき身をいかゞせん

これを上人は読みも終らずに、衣の袖を顔に押しあてゝお泣きになりました。道場の内に一杯になっている聴衆が、貴賤、上下、道俗、男女の分ちなく、袂を絞らない者はありませんでした。これを聞いたり、見たりしまして、その場で髻を切って刀と一所に御前へ差出して、早速御弟子になる者もあります。そうかと思うと、又此方では一人の女性が笠の下から髪を切って、上人に参らせて発心をする者もあります。その外われも/\と遁世をする人の数はどのくらいあったことでしょうか。その時の私の胸の中はたゞもう察していたゞくより外はありませぬ。折角こゝまで来たものですから御説法をも聴聞したいのは山々でしたが、こうしていては今に絆に繋がれる、これはあぶないところだと、はっと気がつきますと眼をつぶって心を鬼にして、合戦の場に千騎萬騎の中へ斬り入り一命を捨てるのもこんなではないかと思いながら、急いでそこを立ち去った其の折の覚悟の程と申すものは、六年前に始めて篠崎を出ましたよりももっと一生懸命でした。