Japanische Klassiker mit Furigana
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ききがきしょう
聞書抄
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 聞書抄 (ききがきしょう) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.821 Zeichen · 210 Bildschirme
兵部大輔が父の心中を思いやって、このたび数萬の兵に将として戦場の指揮をなされた御器量はあっぱれと存じ申す、勝敗は天の命でござれば致し方もござりますまいと、慰め顔に挨拶すると、父は事もなげに笑いながら、秀頼様のおんために害を除いて太閤殿下の御恩に報いようと存ぜしところ、武運拙くしてかくなりしこと、何をか悔み候べき、これは太閤より賜わりし品でござるが、形見にまいらせる、取って置かれよと云って、貞光の脇差を兵部に与えた。そうして兵部大輔のことを相も変らず「田兵々々」と呼び捨てにした。
挿絵
その他、大津の陣に引かれて行った時、内府殿は陣屋の門外に畳を敷かせ、父を縄つきのまゝすわらせて出入の諸将の見せ物にした。すると福島左衛門太夫殿が通りかゝって、汝無益の乱を起し、今のその有様は何たる事だと、馬上から大音を挙げて叱したが、父は屹と正則を見上げて、某の運が拙いばかりに、汝を生け捕って此のようにすることが出来なかったのは残念であると、臆する色もなく云い返したと云う話。福島殿の後から通りかゝった黒田甲斐守殿は、父を見ると馬から下りて丁寧に会釈をし、かくなられたのは御身の不仕合わせとは云いながら、さぞ心外でござろうと、着ていた羽織を手ずから脱いで父に着せてやり、労わってやったと云う話。