Japanische Klassiker mit Furigana
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ききがきしょう
聞書抄
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 聞書抄 (ききがきしょう) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.821 Zeichen · 210 Bildschirme
強さが、見ることはおろか、想像するだけでも空恐ろしく、気の弱い娘は身の毛がよだつようになって、居たゝまれない心地がした。さればそのゝち父が京都へ送られて来て、所司代奥平殿の邸へ預けられたと聞いたときにも、同じ都の近いところにいると云うことが、なつかしくもある一面に、何だか恐いものが側へ寄って来たようで、体がすくむような気がしたが、そうこうするうち、月が改まって十月の朔日に、いよ/\都の辻々を引き廻されて、七条河原で斬られることになったのであった。その当日も、今生の見おさめによそながら暇乞いを、と云うような心にはとてもなれなかったので、娘も乳母も小さくなって、家の中にちゞこまっていたが、後から聞けば、一番の車には父、二番の車には安国寺、三番の車には小西摂津守の順序で、一条の辻を南へ、室町通りから寺町へ出て、七条河原に行き着くまで、見物の群衆おびたゞしく、遠近から寄り集まった貴賤男女で町が一杯であったと云う。そうして父は最後まで剛情を押し通し、首を刎ねられる間際になって七条道場の上人がお経を誦したり念佛をすゝめたりした時にも、それには及ばぬと断ったと云う。