Japanische Klassiker mit Furigana
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ききがきしょう
聞書抄
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 聞書抄 (ききがきしょう) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.821 Zeichen · 210 Bildschirme
自分を「愚僧」と呼ぶからには、多分僧形をしているのであろうが、襟に大きな数珠を懸けていることは分るけれども、その身に纏っているものは法衣とも何とも正体が見定め難いほど、袖口や裾が擦り切れていて、頭には髪がぼう/\と伸びている。そうして、自分がめくらであることをよく改めて貰うかのように、顔を月下に仰向けて反り身になっているのである。
ついぞ剃刀をあてたこともないらしいだらけな顔の、閉じた眼瞼へ月がさしているのを見ると、痩せて、垢だらけになっているので、年恰好の判断もつかないけれども、事に依るとまだそれほどの老人ではないのであろうか。最初に老人と思ったのは盲目のために足取りがたど/\しいのと、老けて聞える声音のせいであったかも知れない。そう云えば乳母は、此の胡算くさい乞食坊主を何処かで見かけた覚えがあった。二人が都へ上って来てから、娘はいつも宿に引き籠っていたのであるが、乳母は毎日世間の噂を聞くために町へ出かけて行ったので、何処かで此の坊主に行き遇ったことがある、それも一度や二度ではなく、たび/\道で擦れちがったことがあるような、と、そう考えて来て、彼女はよう/\此の坊主が、三条の河原に小屋を建てゝ住んでいる順慶と云う行者であったのに心づいた。