Japanische Klassiker mit Furigana
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ききがきしょう
聞書抄
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 聞書抄 (ききがきしょう) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.821 Zeichen · 210 Bildschirme
「そうして、お名前は何と申されます」
「名のれと仰っしゃるのでござりますか、―――」
そう云った時、雁が啼いて通ったので、行者はその声に心を惹かれるかのように空を見上げた。
「―――さあ、それも追い/\申し上げるでござりましょうが、実は愚僧は、そこなお二た方を治部殿のお身内とお察し申して、聞いて戴きたいことがかず/\あるのでござります。町の人々に何を申しましたところで、真面目に取り合ってもくれませぬし、気違い扱いをされるばかりでござりますから、きょうまで自分の身の上を明かしたことはござりませぬが、お身たちに聞いて戴けましたら定めし此の胸がすうっとするでござりましょう。のう、もし、お願いでござります」
行者は重ねて、
「お願いでござります」
と、物をねだるような調子で云った。
「お身たちも御承知の通り、愚僧は畜生塚の傍に庵を結んで、関白殿の御一族の菩提を弔うているのでござりますが、何のために左様な事をしておりますのか、又何のために、治部少輔殿の身内の武士が両眼を失い、扶持に離れて斯様にうらぶれておりますのか。ぜひその仔細を心あるお方にお話し申し、哀れんでは戴けぬ迄も、愚僧のような愚かな男が此の世にいたと云う事を覚えておいて戴きたいと存じていたのでござりましたが、所もあろうに此の橋の袂、亡き殿様の御首の前で、図らずもお身