Japanische Klassiker mit Furigana
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ききがきしょう
聞書抄
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 聞書抄 (ききがきしょう) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.821 Zeichen · 210 Bildschirme
のであった。
挿絵
此の申し出では乳母の心を動かしたのに相違なかった。亡き殿様が念佛を唱えずに死なれたことを気に病んでいた彼女としては、これは聞き捨てにはならないのである。それでなくても殿様は地獄に堕ちていらっしゃるかも知れないのに、畜生塚の亡霊達が祟っていた日には、尚更お浮かびになれないであろう。まことによいところへ気がついてくれたと、そう思った乳母は不安がる娘を促し立てゝ、行者に案内されながら河原へ降りて行ったのである。但し、その晩は塚へお参りをしたあとで行者の庵に泊めて貰ったのか、宿へ戻って寝たのか、聞書の記事ではそこがはっきりしないけれども、そう云う細かい事柄は孰方でもよい。重要なのは、その晩のことがあってから、娘と乳母とは毎日三条の橋のほとりへ来て、父の首にお参りをするついでに必ず塚へもお参りをし、さてそのあとで行者の庵へ立ち寄っては一と休みした。前にも記すように、三成の遺骸は後に大徳寺へ引き取られたので、そういつ迄も橋の袂に曝されていたのでもないであろうが、二人は父の首が拝めなくなった後までも、とき/″\畜生塚を訪ねて香華を供え、行者のところへ食べ物などを持って行ってやることを怠らなかった。