Japanische Klassiker mit Furigana
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ききがきしょう
聞書抄
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 聞書抄 (ききがきしょう) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.821 Zeichen · 210 Bildschirme
ます。それにまた、どう云ういんねんか、此のお二た方は愚僧をたいそう御贔屓にして下されまして、辰一を呼べ、退屈ざましに何か聴かしてと、有難い仰せを戴いたことがたび/\でござりましたが、勾当と云う位は持っておりましてもそれは名ばかりでござりまして、もとより長年研きをかけました藝ではなく、お耻かしい技に過ぎませぬのに、どうしてお気に召しましたのやら。もっともお聞きに入れましたのは琵琶ばかりではござりませぬ。平家を語りましたのではなか/\本筋の座頭たちには及びませぬ故、たゞ何とのう四方山の世間話をいたしましたり、又は諸国の昔話、浄瑠璃、草紙の類などを面白おかしゅうこしらえて、道化た身ぶり手真似などを加えて申し上げますと、お二た方ともいつも御機嫌がうるわしく、ときにはから/\と陽気にお笑い遊ばすことがござりました」
順慶はそこで調子をかえて、
「いや、人間と云うものは、そのとき/″\の境涯につれて変れば変るものでござります。見らるゝ通り愚僧は今も不愛想な、陰気な性分でござりますが、ましてその頃はまだ武士気質の、律義な男でござりましたから、お女中の御機嫌をうかゞうことなどは出来そうもござりませなんだのに、お二た方の御前へ出ますと、何卒お笑い遊ばすようにと懸命になりますところから、洒落や軽口はおろかなこと、思いも寄らぬ作りばなし