Japanische Klassiker mit Furigana
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ききがきしょう
聞書抄
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 聞書抄 (ききがきしょう) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.821 Zeichen · 210 Bildschirme
芳野山梢の花のいろ/\に
おどろかれぬる雪の曙
また関屋の花の木の下にて、
芳野山誰とむるとはなけれども
今宵も花のかげにやどらん
関白殿のお歌には、
木々は花苔路は雪と御芳野の
わけあかぬ山の春の袖かな
以下の公卿衆、大名衆、紹巴、昌叱などの方々も、めい/\短冊を染められまして、さてかねの鳥居、仁王門をお通りになり、蔵王堂へ御参詣なされ、南朝の皇居のあとをおとぶらいなされましてから、桜ヶ嶽、今熊野、たってん山、聖天山、弁才天山など、峰々の花をお眺め遊ばして、昔義経が暫く忍んでおりましたと云う吉水の城を御旅館にお充てなされました。そこのお宿に殿下は二日御逗留でござりましたが、警護の武士などきびしゅう番をするには及ばぬ、小姓ばかりを詰めさせて置けば仔細はないから、誰も/\思い/\の花見をせよと仰っしゃって、酒や肴を賜わったのでござりました。今申しましたお歌の会は、その折のお催しでござりまして、殿下の遊ばされましたのは、
いつしかと思ひ送りし御芳野の
花をけふしも見そめぬる哉
たしか斯様であったと存じます。此の芳野山の花の宴は、太閤殿下が栄華の盛りを極められました御遊のことゝて、かの醍醐の花見と共に今も人々の語り草になっておりますくらい、当時は朝鮮の戦も止みまして、四海波静かに、供奉の方々も太平の春を喜ん