Japanische Klassiker mit Furigana
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ききがきしょう
聞書抄
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 聞書抄 (ききがきしょう) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.821 Zeichen · 210 Bildschirme
なるほど、田中兵部殿のように無いことを有るが如くに述べ、否でも応でもお城の人々を謀叛人に拵え上げてしまいましたら、却って治部殿のお気に召したでござりましょうが、左様なことは愚僧の心が許しませなんだ。されば最初の一年ほどは、御謀叛の形跡は少しも見えませぬ、臣下の中に一人や二人不心得者がおるとしましても、関白殿にそのようなお考は露ほどもござりませぬと、いつもそう申し上げていたのでござります。すると或る時、たしか文禄三年の秋ごろでござりましたろうか、夜中ひそかに参れと云うお使いがござりましたにつき、人目を忍んで治部殿のお邸へ参上いたし、朝鮮以来絶えて久しき御挨拶を申し述べましたところ、君は聊か御不満のお顔つきで、いかに、左衛門尉、そちを見込んで間者の役目を云いつけたのに、あれからもはや二年近くも聚楽の様子を窺いながら、いつも/\判で捺したように、怪しい素振はないと云う注進ばかりを寄越すのは、しかとそれに違いはないかと仰っしゃいますので、いかにも、某、及ばずながら気を配ってはおりますけれども、今日までのところでは疑わしいことはござりませぬ、世間の人は何のかのと善からぬ沙汰をいたしますが、関白殿はそのようなお人柄とは覚えませぬと、申したことがござります。