Japanische Klassiker mit Furigana
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だっせんむすこ
脱線息子
佐々木 邦
Lesen Sie 脱線息子 (だっせんむすこ) von 佐々木 邦 (ささきくに) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.293 Zeichen · 221 Bildschirme
「はあ?」
「お茶碗なんか別にしているのかい?」
「いゝえ、此方さまと御一緒でございます」
「厭だぜ/\」
と新太郎君は慌て出して、
「もう一人この外れにいる人は?」
と念を入れた。
「あの方も東京でございますよ」
「東京は分っているが、矢っ張り病人だろう? 何処が悪いんだい?」
「チブスをやったとか仰有いました」
「チブスか? 此奴も気味が悪い。そうしてやっ張り御一緒だろう?」
「オホヽヽ。でも最早悉皆直っていらっしゃいます」
と女中は膳を引いて行った。
実際、転地療養に来て丈夫な身体に病気の背負い込みをしては溜まらない。新太郎君は転宿の意を決して、即夜お上さんに相談した。そこは去年から馴染みだから都合が好かった。
「肺の方は離れですから大丈夫ですわ。此方の方もチブスはもう疾うの昔に直って神経衰弱を起している丈けですから、うつる気遣はありませんよ」
とお上さんは一応弁明した。
「うつらなくても毎日顔を見るのが厭だよ。神経衰弱なんか」
と新太郎君はいくら大きな声を出しても東京まで聞えっこないから安心だった。
「季節外れにお出になる方は大抵病人ですよ。あなたのように御勉強にお出になる方は滅多にありません」