Japanische Klassiker mit Furigana
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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
Lesen Sie 花と龍 (はなとりゅう) von 火野 葦平 (ひのあしへい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 410.131 Zeichen · 824 Bildschirme
「これは、これは」
金五郎が、受けとると、
「あたしの家の庭に、咲いたものです。枯れたら、また、とりかえてあげますわ」
「この花の枯れるまでは、居らんよ」
新鮮な菊の強い芳香は、一坪立方の邸内を、いっぱいに、むせかえるほど満たした。のみならず、二つの小窓から流れだして、荒廃した長屋の隅々まで、匂った。
一つ蒲団にくるまって寝る狭い箱の中で、金五郎と新之助との友情は、急速に、そして、堅確に、結ばれた。二人は、兄弟分の誓いを立てた。同年配ではあるが、金五郎が、兄貴分である。
「新公、おれは、この箱から出されたら、すぐ、浜尾組を暇取ろうと思うとるんじゃが……」
「おれも、そう思うちょる。ひでえ親方じゃ。今度のコレラ騒動でも、たった一ぺん、顔を出しただけ、まるで、寄りつきゃせんで、メカケのところに、べたべたしとる。おかみがコレラで死んだのをええことにして、二号を家に引きこむ算段らしいわい。それは、まあ、勝手じゃが、組の者が、こんなむごい目に逢うちょるのに、見舞にも来んし、医者も、看護婦も、さし向けやせん。死んだ者のところだって、かえって迷惑そうな顔して、ほったらかしじゃ。