Japanische Klassiker mit Furigana
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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
Lesen Sie 花と龍 (はなとりゅう) von 火野 葦平 (ひのあしへい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 410.131 Zeichen · 824 Bildschirme
心が重く、足どりに力がなかったからである。
しかし、大した距離でもないので、いつか、自然に、原田邸の門前にたどりついていた。「若松新聞社」という、家には不似合な大きな看板がかかげられてある。それを見ながら、「玉井組」の半纏姿で、蝙蝠傘をさしている勝則は、しばらく、ためらっていて、案内を乞う勇気が出ないもののようだった。
原田雲井の方から、見つけられた。
「やあ、そこに居るとは、勝則君じゃなかな?」
「はあ」
と、仕方なしに、答えた。
「そげんとこで、なんごとば、しよるとな? 雨ん中に立っとらんで、早よ、内さい這入らんかな」
「失礼します」
崩れかけて傾いている、扉もない、門のようなものを潜って、玄関に通った。
蝙蝠傘をたたもうとすると、
「傘は、そのまま、そのまま。わが家は、雨の日は、内も外も同じこと。傘はさして、上がッつかアさい」
勝則も笑いだして、靴だけ脱いだ。傘の方はよく雫を切ってから、また、さして、座敷に上った。
長屋の一軒で、六畳、四畳半、三畳、の三間ある平屋だが、その荒廃のさまは空家同然といってよい。調度類はほとんどなく、襖、障子は破れ放題、ガラス戸のガラスも、満足なのは、幾枚もない。