Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
Lesen Sie 花と龍 (はなとりゅう) von 火野 葦平 (ひのあしへい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 410.131 Zeichen · 824 Bildschirme
拍手が起った。
「やりましょう」
見台に似た台を取り寄せさせ、新聞紙で、即製の肩衣をこしらえて、金五郎は正面の座についた。舞台はない。太枠もないので、徳弥という芸者に、普通の三味線を持たせて、左に侍らせた。おどけた顔つきをし、頓狂な声色で、自分で、口上を述べる。
「東西東西、このところお聞きに達しまする浄瑠璃芸題『艶姿女舞衣』、語りまする太夫、玉井春昇、三味線徳弥、いよいよ、三勝半七酒屋の段、そのため口上、東西東西」
この芸題が馬鹿の一つ憶えのようになってしまった。若いころから、義太夫を好きで語って来たけれども、素質がなかったのか、大して上達もしない。本物にもならず、酒席の座興で、お茶を濁すのが関の山だった。しかし、金五郎は、語りながら懐旧の念に耐えなかった。昔、江崎満吉との喧嘩の仲裁宴のとき、「飛鳥」の舞台で、お京の三味線で、これを語った。その夜のさまざまの出来事は忘れられない。ふと、お京がいるかと、隣りをふりかえるような、妖しい錯覚さえ起すのであった。
「……今ごろは、半七ッあん、どこにどうして、ござろうぞ……」
と、眼を細めて唸りながら、どこにどうしているかわからないお京のことを考えている。