Japanische Klassiker mit Furigana
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よしとししゃせいちょう
芳年写生帖
野村 胡堂
Lesen Sie 芳年写生帖 (よしとししゃせいちょう) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.626 Zeichen · 26 Bildschirme
二人の官兵はよく闘いましたが、一人は足を苅られ、一人は不意を喰って、死物狂いの欽之丞の敵ではありません。真にあッと言う間に、左右に斬って落されました。
二人の官兵を片付けた欽之丞は、芳年の側に寄って、夕闇の中からその顔を差覗きました。
「気を喪ったのか、馬鹿な奴」
冷たい笑が頬に淀んだのもほんの暫らく、次の瞬間、欽之丞の手は、芳年の縄を解いて、その着物を剥ぎ始めます。
「あッ、お助け、命ばかりは――」
芳年は漸く気が付きました。
「命は取らぬが、その方の着物が入用なのだ、暫らく借りるぞ」
武装を脱ぎ捨てた欽之丞は、芳年の袷を着流し、脇差だけ一本、深々と懐に呑み、幸い道端の水溜りで、ザッと手足や顔の血潮を拭き取りました。
心持髷を直して、芳年の手拭を取上げて冠ると、何うやら彼うやら町人らしくなります。
「それ、これは礼だ」
ポンと投り出したのは小粒が二つ三つ、
「あ、もし、お武家様」
芳年はその小粒には目もくれず、襦袢一つの姿で泥の中に起上りました。
「何んだ、金が不足か」
振り返った欽之丞、弥蔵さえも拵えて、頬冠りの中に匂う顔は、歌舞伎芝居の花道で見るような男振りです。