Japanische Klassiker mit Furigana
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えいほんどじょうりくせんのぜんや
英本土上陸戦の前夜
海野 十三
Lesen Sie 英本土上陸戦の前夜 (えいほんどじょうりくせんのぜんや) von 海野 十三 (うんのじゅうざ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 35.727 Zeichen · 72 Bildschirme
窓から差し出されたのであった。
「いやに、うるさいのですね」
と、仏が、鉄格子の中を覗きこみながら、いうと、
「おう、若い中国の方。今朝から、特別の警戒なんですよ。桟橋附近で、夫婦連れのスパイを見かけたが、一人は海へ飛びこむし、他の一人は行方不明になるし、それで、この騒ぎですよ」
「それは、どこの国のスパイですかね」
「もちろん、ドイツ側のスパイですよ」
「ああ、ドイツですか。けしからんですなあ。しっかり、気をつけていてください」
アンが、しきりに服を引張るので、仏は、そのくらいにして、出札口を離れたが、そのとき、駅員の前に、「要監視人通告書」という紙が載っていて、そこに、「間諜フン大尉の件」という見出しのついていたのを、目敏く読みとった。
(フン大尉か)と、仏は口の中で間諜の名をくりかえした。
アンは、不機嫌だった。
「あなた。さっきの防空壕のこともあるんですから、あまりあたしたちにとって不利な発言は、なさらないようにね」
「不利な発言? おれがいま駅員と話をしたことが、それだというんだね」
アンは、黙ってうなずいた。
「なあに、大丈夫さ。でも君が心配するなら、以後は、口を慎もう」