Japanische Klassiker mit Furigana
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おつきさまのうた
豊島与志雄童話集
豊島 与志雄
Lesen Sie 豊島与志雄童話集 (おつきさまのうた) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.569 Zeichen · 336 Bildschirme
それから、ふいにたずねました。
「きみは満州に初めて行くのかい」
「うん」
「なにしに行くんだい」
太郎は黙っていました。
「行ったっておもしろいことはないよ。ぼくは小さい時、おじさんに連れられてきて、ほうぼうをまわったが、つまらなかった。いやになって、またちょっと、日本に戻ったけれど、日本でも、あまりおもしろいことはなかった。それに、おじさんが病気をして、手足がよくきかなくなって、手品がうまくつかえないんだ。それで、また満州に行くところだよ」
「そして、これから、何をするつもりだい」
「やっぱり、手品使いさ。ああ、ぼくが早くじょうずになるといいんだがなあ」
「毎日、練習をするのかい」
「そうだよ」
そして彼は、なにか急に思い出したらしく、駆け出して行こうとしました。
「ねえきみ」と、太郎は後から呼びかけました。
「大連に行ったら、ぼくんとこに遊びにこないか」
「ああ行くよ、行くよ」
そそっかしい少年で、それきり向こうに駆けて行きました。太郎はしばらく待ってみましたが、彼はもう出てきませんでした。太郎は船室に戻っていきました。名前もわからず、ところもわかりませんでしたが、その少年のことを、なつかしく考えました。