Japanische Klassiker mit Furigana
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いさん
銀座復興 他三篇
水上 滝太郎
Lesen Sie 銀座復興 他三篇 (いさん) von 水上 滝太郎 (みなかみたきたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 40.579 Zeichen · 82 Bildschirme
庭先の松の林の向うに、月の出の明るい色が段々濃くなって、見ているうちにまんまるい月が、ぐんぐん空にのぼって行った。
「あら、私櫛を落して来たわ。」
突然読みかけの雑誌を伏せて養子が叫んだのは、大分更けてからだった。少し旧式の大きい束髪に手をあてて、首をかしげたが、
「きっと先刻休んだ所ですよ。その前には確かにあったんだから。参円五拾銭落してしまっちゃあ惜いわねえ。」
冗談を云いながら立上ると、縁側に出て空を見た。
「いい月夜だから、一寸行って見て来よう。乙子さん待ってらっしゃい。直き戻って来ますから。」
「養子さん、一人でよくって。」
編物の手をとめて、甲子が声をかけた。
「大丈夫ですよ。こんなに明るいんですもの。」
無雑作に答えて、後姿は歩き出した。
「僕が行って来ましょうか。」
澤は、機械体操でもするような身の軽さで、椅子から飛下りると、あとを追って庭に出た。
「いいえ、いいんですよ。自分で行きますよ。」
という女の声がはっきりと姉妹の耳に聞こえたが、それきり二人とも行ってしまった気配だった。
門の外の、雑草にまじって芒や野菊も延びている溝川のへりを真直ぐに海に出ると、月夜のあかるさは一層はっきりしたが、西の方の空には大きな雲が重なり合って、風も思いの外強かった。