Japanische Klassiker mit Furigana
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いさん
銀座復興 他三篇
水上 滝太郎
Lesen Sie 銀座復興 他三篇 (いさん) von 水上 滝太郎 (みなかみたきたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 40.579 Zeichen · 82 Bildschirme
養子と一郎は姉妹の相手をして、円座をつくってトランプをしていた。一郎はしきりに調子づいて、ノオ・トランプを連呼していたが心の中はおちついてはいなかった。昨夜は、岡部が故意と二人のために席をはずして撞球場へ行った後で、翠子を誘って浜辺に出た。月明の渚を霊山ヶ崎まで歩いたが、途中でひたひたの稲瀬川を渡る時は、多少躊躇している翠子を、無理におぶって渡った。夕立が落ちて来た時は、そろそろホテルの方へ帰るところだったが、容赦なく降って来たのをきっかけに、いきなり相手の手をとって駆出した。
すくなからぬいたずら気分で、足の遅い女の倒れそうになるのも構わず、逸散にホテルの葭簀小屋まで駆足を続けた。暗い砂山の下のその小屋についた時は、一郎さえ呼吸がはずんで口がきけなかった位だから、翠子は頭から裾までずぶ濡で、苦しい息づかいをしながら、
「随分ひどいわ。」
と言おうとしても、言葉は唇まで出て来てくれなかった。雨に濡れた全身に、熱い汗が蒸すように湧いて来た。もう一歩も進む気力はなく、手を放せばそのまま膝をついてしまいそうな姿に見えた。一郎は、途中でぬいで左手に持っていた下駄を砂地に捨てると同時に、両手を広げて相手のちいさい体を抱いた。