Japanische Klassiker mit Furigana
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いさん
銀座復興 他三篇
水上 滝太郎
Lesen Sie 銀座復興 他三篇 (いさん) von 水上 滝太郎 (みなかみたきたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 40.579 Zeichen · 82 Bildschirme
抱きしめると、自分の着物の濡れているのが、殊に強く感じられた。香料の匂う束髪の額を胸につけて、死んだように動かない翠子の様子に、すっかり安心して、目の前にほの白く見える頸に軽く接吻した。
その時の事を想い出すと、妹の相手をしてトランプなんかしているのが馬鹿馬鹿しくて為方がなかった。今日も午後からホテルの庭で、岡部と庭球をする約束になっていて、翠子もきっと来ると誓っていたのを考えると、早く午後になればいいと思うばかりだった。自然と、冒険的に骨牌を打つ気分だった。
澤は風邪の気味で鼻をつまらせながら、微熱の体を籐椅子の上に横たえていた。
「澤さんは意気地なしねえ。私だって昨夜はびしょ濡になったけれど、平気だわ。」
何事もなかったような晴々した顔附で、養子はトランプの手をやめては冷かしていたが、澤は苦笑するばかりで、縁側の外におびただしく延び繁った台湾葦の風に吹かれて白い葉裏をかえすのを見ていた。熱を持って鈍く重たい頭の中で、面白くない事ばかり考えていた。
それは、自分が養子に対して、時機の熟すのを待たなかった事の後悔が主なものであった。先方が、曲淵一家の中にあって、人一倍自分に親切にしてくれたのは確かだが、それが特殊の意味のあるものだったかどうかはわからない。