Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(九) 全十冊
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控(九) 全十冊 (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 41.029 Zeichen · 82 Bildschirme
お灯明はありましたが、お気の毒なことにお通夜をする人もなく、皆んな銘々の部屋へ引取って休んでいる様子でございました」
お妙はせぐり上げる涙に、ときどき絶句しながら、思いのほか雄弁にこう続けるのです。誰に打ち明けることも出来なかった激情が、平次という同情者を得て、相手の身分かまわずに爆発したものでしょう。
十八の処女、病弱な上に足の悪い娘が、二町ばかり隔てた畑の中を、言い交した若い恋人の死骸に、最後の別れを惜みに通った光景は、本人の口から聴くと、また格別の無気味さです。
「その時、その時ですよ、お嬢さん。朝倉屋の内儀――竜吉の姉のお専には逢わなかったのですか」
「逢いました」
「?」
「私が二階の部屋で、竜吉さんの死骸に別れを惜しんでいるとき、階下で変な物音がしておりましたが、帰りに梯子段の下を覗くと、遠い通夜の灯りで、あの人が板の間に倒れているのを見ました」
お妙の言葉は、あまりに平静であまりにも無造作に聴えます。
「どうしてその時、大きな声を出さなかったので?」
「…………」
「お嬢さんが、朝倉屋の内儀殺しの疑いを受けても、あの畑の中の足跡を残しては、弁解の道がなくなりますよ」