Japanische Klassiker mit Furigana
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いずこへ
風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇
Lesen Sie 風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇 (いずこへ) von Sakaguchi Ango (坂口 安吾) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 119.879 Zeichen · 242 Bildschirme
そのときはもう長い放浪で身体が衰弱しており、冬の暮方、病院で息をひきとった。
それはまだ暮方で、別邸では一家が炉端で食事を終えたところであったが、突然突風の音が起って先ず入口の戸が吹き倒れ、突風は土間を吹きぬけて炉端の戸を倒し、台所から奥へ通じる戸を倒し、いつも白痴がこもっていた三畳の戸を倒して、とまった。すべては瞬間の出来事で、けたたましい音だけが残っていた。それは全くある人間の全身の体力が全力をこめて突き倒し蹴倒して行ったものであり、ただその姿が風であって見えないだけの話であった。そこへ病院から電話で、今白痴が息をひきとったという報せがあったのである。
私は白痴のゴミタメを漁って逃げ隠れている姿を見かけたことがあった。白痴の切なさは私自身の切なさだった。私も、もしゴミタメをあさり、野に伏し縁の下にもぐりこんで生きていられる自信があるなら、家を出たい、青空の下へ脱出したいと思わぬ日はなかった。私はそのころ中学生で、毎日学校を休んで、晴れた日は海の松林に、雨の日はパン屋の二階にひそんでいたが、私の胸は悲しみにはりさけないのが不思議であり、罪と怖れと暗さだけで、すべての四囲がぬりこめられているのであった。