Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme
ギリギリギリ……と髪切虫の啼くような自鳴鐘の音が、その時、有村の後ろでした。
ちらとふりかえって、
「ウム、もう六刻半」と心をせわしなくしつつ、
「船の出る潮時までは後一刻(今の二時間)ほどしかない。その間にとくと見定めておきたいが、どこじゃ、その男女が隠れた部屋は?」
「それと見た時に母屋の下も探りましたなれど、何せい、床下からはその見当がつきませぬ」
「念を入れて身を潜めば、気配ぐらいは分る筈、もう一度忍んでみい」
「はっ」
「その男女から寸間も目を離してはならぬ」
「心得ました、では」
と、床下の影がズリ退ろうとすると、
「待て待て」
と呼び止めた。
そしてちょっと思案をしなおすふうであったが、またすぐに、
「よし行け!」とキッパリいって――「この有村も屋敷裏へ廻って天井から母屋の様子を探ってみるであろう。万一、なんぞ非常な場合が生じた時には、呼子笛を吹いて合図をすること。よいか、くれぐれ先の者に気取られるなよ」
と、畳を伏せた。そして、
「これ、森――」と面をふり向けた。
「はっ」
「しばらくそこを動いてはならぬ」
「あまり軽率なことを召されては」
「いや、大事ない」