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Japanische Klassiker mit Furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme

Aozora Bunko

「そちが十年前の縁を思って、こうまでしていてくれようとは、思いがけぬ神護であった。なおこの上は自分としても、ジッと弦之丞の安否を待っているのは心苦しい。で、迷惑の上の迷惑ではあろうが、この姉弟をしばらく寮に預かっておいてくれぬか。そして、桃谷の家に療治をしている万吉のことも、よそながら何分心づけてくれるように頼みたい」

こう言い残して、お久良の侠気を見込んだ鴻山が、ふたたび、藺編の笠の紐を結んで、四国屋の寮からいずこともなく飄然と立ち去ったのは……後の話。

さて。

大事はまだ当夜の四刻時ごろに残っている。

表面は夜凪のとおり無事平穏に天神岸からともづなを解いた二百石船――淀の水勢に押されて川口までは櫓櫂なしだが、難波橋をくぐり堂島川を下って、いよいよ阿州屋敷の女松男松、水見櫓の赤い灯、お船蔵の石垣などが右岸に見えだしてきたころも、果たして何の疾風も船中に巻き起こらなかったであろうか? ……これはお久良も鴻山も知るよしがなかった。

*     *     *

船が天保山の燈籠台を左に過ぎるまでは帆柱を立てないので、水夫は帆車や帆綱を縦横にさばき、川口を出るとたんにキリキリと張り揚げるばかりに支度をしていた。