Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme

Aozora Bunko

「謝った! 宅助お役目が大事でござんす、あなたに大阪でジブクラれると、まことに手数がかかっていけねえ。どうかすなおに陸へ上がって、すなおに遊んで、すなおに阿波へお帰り下さいまし。おっと、冗談はともかくとして、この舟を、いったいどこへ着けさせますか?」

「そうだねエ」

「そうだねエじゃ船頭が可哀そうだ。なんならすぐに川つづきを、このまま立慶河岸へやって、川長のお店の前へつけさせましょうか」

「やめておくれ、ばかなことを」

お米は、腹が立つように、

「家を出たまま、半年以上も姿を隠していながら、不意にボンヤリと帰れるものかどうか、お前だって考えてごらん。神隠しに会った与太郎じゃあるまいし……」

と、口でぞんざいに言い放しながら、胸では、何か密な考えをめぐらしているふう。

もとよりお米の真意は、二度とふたたび、啓之助の所へなど帰るまいとしているので、それにはなんとかして、この宅助という監視の紐を、大阪の町で、迷子にしてしまわなければならないと苦思している。

ところが、紐もまた一癖も二癖もある紐で、目から鼻へ抜けている上に、女あしらいに馴れていて、お米の心の動き方まで、いちいち浄玻璃の鏡にかけて睨んでいるような男――なんとも始末の悪い紐だ。