Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme

Aozora Bunko

「あの絵師の半斎さんにね。そりゃけっこうでござンしょう」

「そして、叔父さんに、啓之助様のお世話になっていることを話して、家へも程よく話して貰った上、こんどは晴れて阿波へ行くということにしたら……」

「だが、ちょっとお待ちなさい。なんだか、旦那に暇を貰ってくる時には、あなたのお袋様が、危篤とか大病とかで、急に来てくれという訳じゃありませんでしたか」

「そんなことは、元から嘘の作りごとだということを、お前だって、うすうす知っていたじゃないか。私は、ただ、この大阪が見たくって」

「驚き入った腕前です。それで、あんな涙がよく出ましたね」

「おや、いつ私が、泣きなんぞしたえ?」

「したじゃございませんか――ほれ、剣山の麓口の――あのむし暑い納屋倉の中で、納豆みたいになりながら、いつまで、シクシクシクシクと」

「いやな、宅助!」

日傘をすぼめて、その先で、はしたなく向うの膝を突きながら、

「いい加減なことをおいいでない! 船頭さんが笑うじゃないか」

「もっともわっしは、程よく酩酊した時だったんで、残念ながら、それ以上知らないことにしておきましょう。ところでそういうお話なら、とにかく、この辺で艀を上がるとしましょうか。