Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme
「ふびんな娘たちよ……」
合歓の花は世阿弥のくぼんだ眼からポロポロと涙を呼んだ。
その時、一本の羽白の矢が、ヒュッ――と鏃に陽の光を切って、うつつな、かれの姿を狙ってとんだ。
「しまった!」
と、三位卿、素早く二の矢をつがえて向うを見た。
山牢のある瘤山の裾は、覗き滝の深潭から穴吹の渓谷へ落ちてゆく流れと、十数丁にあまる柵が、そこの地域を囲っている。
柵外の爼板岩の上に立つと、あなたのほうに洞窟の暗い口と、合歓の巨木が見えた。有村は、弓を構えて磐石の上に立っていたが、
「ちイッ……」と舌打ちして、しぼりかけた二の矢、弓ぐるみ、ガラリと手から捨ててしまった。
「お手際」
と、下から賞めた者がある。
「皮肉を申すな」
と三位卿は、岩から跳び下りて、天堂一角、お十夜孫兵衛、旅川周馬、その三人の前へ立った。
「むごい殺し方をするよりは、ただひと矢にと思ったのだが、一の矢、襟元をかすめて合歓の木の幹へ刺さってしまった」
「では、世阿弥のやつ、覚りましたな」
「ふいと姿を隠しおった。しかし、逃げられる場所ではないから安心じゃ」
「殺害しに来たのを知ったとなると、かなわぬまでも、さだめしジタバタするでしょう」