Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme
仲間の脱走者で、長崎の果てまで逃げたやつがあるが、老人はいながらにして、その男の首を見た。
孫兵衛も故あって、他国へ出ていても、絶えず龍耳老人の監視をうけている身だから、すぐに頭脳へピーンときた。
世阿弥はまた話しつづける。
「お祖父様と病人が頼むと、その老人が、黙ってお前の襟がみをつかみスルスルと母親の枕元へ引きずってきた。と――お前の母の細い腕は、お前の首を強く巻いて、夜具の下へ押しつけた。その片手には、柱の隠し穴から取り出したさんらんたるものをつかんでいる。アッ、お前は悲鳴をあげて四肢を突っ張る、同時に母は息をひきとりそうになった。ぎょッとしたが、周囲の者も、見ているよりほかなかったらしい、白い蒲団は血で染まった」
しばらく言葉を切っていたが、孫兵衛は、刻一刻と、世阿弥を突く機を逃がしていた。
「――まさに絶えなんとする息の下で、お前の母は、原士の長の老武士へ頼んだ。――孫兵衛が改心するまで月代をのばすことはなりませぬ。孫兵衛めに私のお祈りが要らなくなるまで、遺物に与えた頭のものをとることもなりませぬ。この遺言を破った時は、お祖父様、川島郷七族のため、どうか、お情けに孫兵衛を殺してやって下さいませ。