Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme
足もとの闇から黄泉の府にまで続いているのではないかと思われる。群山すべて低く白い曳迷は雲である。
仰ぐと。
けむりのような銀河をかすめて、星がひとつ流れた。老人は歩をとめて、しばらく、草のそよぎを聞きわけている。
じっと……
「? ……」
行きくれた盲目のように。
ありとも思えぬくらいな微風が、老人の姿にあつまってヒラヒラする。白い髯――骨ぐみのすいてみえる麻の両袖。刀は、鎧どおしのような短いのを一本、前ざしでなく、わざと横へ。
……てく、てくとまたいつか歩きだしていた。
「ここだな」
間者牢の柵わきへ来ると、例の奔流がドーッと耳をうった。山牢の穴も柵の中も見えない。見えないが老人は、そこで、夕陽時の修羅のすごさを眼に描いた。
かれは、夜もすがらここを歩こうとするのか。歩いて夜の明けるのを待とうとするのだろうか。
かくて、一刻半ばかりも、その辺にたたずんでいた。
何事もない。
強いて天地の変移をさがせば、霞のような星雲が消えて、特に大きな星がひとつ、西に目立っていたことである。
「はてな……?」
ピタ、ピタ、と夜露をふむ自分の足音を聞きながら――
「ひょっとして、自刃したかな、所詮のがれぬことは分っておるからな……だが、いや、自害はしまい。