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Japanische Klassiker mit Furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme

Aozora Bunko

また憂国の士でもござらん。弱い人間の微情にひかされ、武士という形づけられた意気地に押されて、ここに立った一個の放浪者――、世潮を口にする資格はない」

「では、その情といい、意地というのは?」

「恋もある、泣かぬ涙もある。凡人弦之丞、愚痴はてんめんでござる。話すのも聞くのはわずらわしかろう。――意地といえば、二百年来、江戸の禄を食んだ家に生まれた江戸の武士、このきずなをどうしよう! いや、それはもう、清濁の時流を超え、世潮の向背をも超えてどうにもならない性格にまでなっている」

「ウーム……では、戦国に戻って天下は割れる、紛乱する」

「割れるでしょう、禁門方、徳川方」

「いったん、泥と血とがこね返って、新しい世が立てなおる、王政は古にかえる」

「しかし、易々とは渡しもせず、うけ取れもせまい」

「なんの、大したことがあるものか」

「その偉業が成る前には、蜂須賀家ぐらいの大名、三家や四家は、狼火がわりにケシ飛ぶであろう」

「ウム」うなずくと見せて――

突然。

「こうかッ!」

と叫んだとたん、ズドーン! と不意に切った火ぶた。

翼を搏った鸞のように、飛びしさった龍耳老人の手には、黒檀柄に銀鋲を打ったスペイン型の短銃! 真綿のようなけむりを曳いて持たれている……。