Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme
と、辛辣な腕のうずきをおぼえた。
「誰じゃ?」
左京之介は不意に立って、廊下を二、三度行き戻りする小侍を呼び止めた。
「は、最前の方でござります」
「最前の?」と、解せぬように反問していると、そこへまた用人のひとりが奥から出てきて、
「どうも見当たりませぬ」
と、左京之介には覚えのないことを復命した。
「なにが、見当たらぬのじゃ」
「はい、只今お帰りになった、江戸表のお役人ふたりが、振分を持ってお帰りでございましたが、その下へ、取り急いで四ツに折った紙片を忘れて行ったと、また戻ってみえたのでござります」
「ふム? ……しかし紙片とは何なのか。あまり漠然ではないか」
「よくお話になりませぬが、なんでも、これから京都町奉行所の方とお打合せをするための人相書だそうでございます」
まがきの萩に、一枚の紙きれが吹きつけられていた。
ひと風さわさわとそよいだら、今にも、萩の枝を離れて加茂の河原へ逃げてゆきそうに、先刻からヒラヒラしている。
いくら座敷をたずねても見当たらない筈であった――風の悪戯? ――こんなところに運ばれていたのである。
青くなって、取りに戻った江戸の与力両名は、ぜひなく、後の発見を用人に頼んで帰ったが、用人は雑事にまぎれてふたりが帰るとともに忘れていた。