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Japanische Klassiker mit Furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme

Aozora Bunko

弦之丞殿から、頼まれてまいったものだが……」

「えっ、弦之丞様に?」

お千絵はまた起き上がった。

内と外で、しばらく返辞を待つ心が探りあっていた。あたりの虫の音がまたしげく聞かれる程、外の影もジッとしている。

「お千絵どの」

「はい」

釣り込まれるように返辞をしてから、いよいよ身を硬めている。

「わしは山科の僧院にいる寄竹派の普化僧です。同じ僧院に、法月弦之丞というものが近頃まいっておる。彼に逢ってみれば分るが、わしとは別懇な間がら、その宗友に頼まれてきたのですがな」と独語のように外でいう。

「オオ、では……」と皆まで聞かずに、お千絵の恐怖は別なものにおどって、乱れ筥の衣類をかけ、帯を結んで戸を開けなおした。そして、おずおずと竹縁に出ると、

「ぜひ、あなたに会いたいといって、弦之丞殿が待っておられる」

と、向うの影が、前のように手招きした。

お千絵はもう弦之丞自身が、そこへ来ているような気もちに誘われていた。ありあわす小間使の草履をはいたかの女の足は、一寸先の闇に向いて、なんの分別もなかった。

ふらふらと柴折を押して、庭の外へ出てみると、深い天蓋をかぶった虚無僧の姿が、河原のヘリをスタスタと先へ歩いてゆく。