Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme
剣戟のあいだに弦之丞のかすれ声。
「合点です!」と、高く返辞を投げたものの、万吉はたじろがざるを得なかった。
柳剛流の猛者湧井道太郎と、悪鬼のように斬ってかかる孫兵衛の死にもの狂いに、さしもの弦之丞、刻一刻と苦闘に迫っている。
右の股、左の小手に一ヵ所、浅からぬ傷さえうけた様子である。
「死ぬ気だな――弦之丞様は?」と万吉、どうしてもそこを去りかねて、道太郎の横を衝こうとすると、
「何をぐずぐずしているのじゃ。万吉、早く行かぬかッ」と弦之丞がまた叱りつけた。
ぜひなく万吉。
「おのれその秘帖を」
と追いすがる有村へ、脇差を投げつけて、両手でおさえたふところの秘冊! 幾多の犠牲をかけられて奪り奪られした阿波の大秘! 宝石のように抱きしめながら、お綱のあとを追って禅定寺の峠路を熱い息で駆けのぼる。
――危機は刻々とせまる、かくて、弦之丞の青白い眉間は、死相をあらわしてきたのではないかと思われた……。
そこを避けて、一方、禅定寺の寂しい峠路。
お綱は、心をあとに残して、半ば、喪心しているお千絵を助けながら登ってゆく。
あの人のことである、今に血路をひらいて、きっと追いついてくるに違いない。