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Japanische Klassiker mit Furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme

Aozora Bunko

やがて、その夜景の人をかき分けてゆく、孫兵衛たち三人の影がたしかに見えた。

しきりと気を配っていたお品が、ただちにそれと、三人へ告げたのだろう、何かの用をすまして、今、川長から出て行ったお吉の後ろ姿が、かれらの十数間前にある。

お吉が、久しぶりに川長を訪ねたのは、何かお米の身についてのことらしかった。そして、今日もお米の母の涙まじりなくり言を、身につまされるほど聞いてきたので、人浪の中を歩きながら、今もお吉は、そればかりを考えてゆくふうだ。

まもなくお吉は桃谷の自分の家へ帰り着いていた。

誰もいない家なのに、行燈だけはついていた。お吉はそれを不思議にも思わないで、帰るとすぐに、女らしく、襷をかけ、途中からさげてきた買物の風呂敷づつみを解いて、勝手へ運んだ。

薄暗い流し元で、瀬戸物を洗う音や、米をとぐ音がしばらく聞こえている。裏の小溝へ白いとぎ水がひろがった。溝の向うに菜の花がみえ、その先は桃畑だった。

そして、なおその向うには、藪や、同心屋敷の灯や、城ともみえぬ御番城の巨大な影が、山のように空の半ばをふさいでいる。

垣隣りは、城勤めの黒鍬の者か、足軽のような軽輩な者の住居らしい。