Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme

Aozora Bunko

「今夜はここで舟泊りじゃ。ゆるゆる用をすましてくるがよい」

「へえ。なにしろ大阪へ来てからも、まだろくろく顔を見せていねえ女房、ことによると今夜あたりは、向うへ、泊りたくなるかもしれません」

「うむ、そうしてまいるがよいではないか」

「ありがとうぞんじます」

と万吉、弦之丞のまじめさと、お綱のはにかましげな様子を見くらべて、

「いっそ、今夜ひと晩は、この万吉の帰らねえほうが、そちら様にもご都合がいいかもしれませんね。え、どうですな、お綱さん――」

と、冗談のようにいう。お綱は、顔を赤くして、

「なるべく、早く……、ね」

と、いったが、万吉は、その顔を指さして、

「嘘ばッかり……」

と、笑いながら、ひらりと陸へ上がってしまった。

そしてまた急に、思い出したようにふりかえって、お綱のほうをジッと見ながら、

「ほんとに、今夜は、帰るまでも、少し遅くなりますから……、どうか、そのつもりで、後をよろしく……へへへへへ。よウがすかい、お綱さん、あの約束をネ」

と、目に物をいわせるそぶり。

あの約束? ――と意味ありげに。

それは、駿河台の墨屋敷で、固く、お綱と万吉の間に交わされた、あのことを指したのに違いない。