Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme
「しかし、お綱、わたしの言葉もきいてくれ」
「はい……」
お綱は、やさしく男の手にもたれた。
いつか弦之丞は、そのふところへ恋すまじき女を抱えていることには気づかず、つとめて、たぎる血をしずめようとした。
「――そなたの心を話されてから打け明けるは、つらい事情であるが、わしには遠い以前から、誓いをした仲の女性がある」
「あ……」お綱は不意に、胸へ氷をあてられたように、
「それをおっしゃって下さいますな……そ、その人の名を聞かされれば、私はすぐにも、あなたの側を去らなければなりませぬ」
「では、そなたそれを、知っているか」
お綱は返辞をせずに、激しい痙攣を起こして、またすすり泣きに泣いていた。
弦之丞とお千絵様との仲は、きょうまで、万吉もかれも、決してお綱に話してなかったことだが、怜悧なお綱は、墨屋敷以来の事情を綜合して、明らかに、心のうちで、それと察していたのである。
「弦之丞様、なんで、お綱がそれを知らないでおりましょう。思うお人に向っては、女は、怖ろしいほど細い心を配っております。けれど、義理の妹の恋を奪って、それで、私ひとりが倖せになろうなどとは夢にも思やしませんの。