Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

ja-reading.com

Lee clásicos japoneses en línea con furigana. Filtra por nivel JLPT, toca una palabra para ver el significado y traduce una frase.

やまびこおとめ

山彦乙女

山本 周五郎

Lee 山彦乙女 (やまびこおとめ) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 126.360 caracteres · 251 pantallas

Aozora Bunko

――そうではない、人間は無意味に生れて来たのではない、現実はいま誤った方向へ動いているが、その支配からぬけだして、本来の生き方にかえれば、充実した意義のある人生を、掴むことができる。

たしかに、それはひとつの呼び声のようであった。その声は、ときをおいて、彼に呼びかけ、どこかへ、(人間らしい生活のほうへ)彼をいざない、招きよせるように、思えるのであった。

「村野さん、またひと口やりますか」

半之助は毎晩、浮かない調子で、そう云うようになった。

その日。彼はぐったりした、疲れたような気持で、ぼんやりと窓の外を眺めていた。机の上には、新井白石の「東雅」が披げてある。覚書を取るための、筆や紙も出してあるが、その筆写本の頁は、まだ三枚と進んではいなかった。

窓の外には、若い赤松の林を越して、鋤き返された土の、黒ぐろと新しい、柔らかそうな栽地が見え、そこからなだらかな丘になって、丘の上の雑木林と、伐り残された一本の大きな松が見えた。

「そうだ、なをは死ぬほうがよかった」

梅雨のように、じめじめと陰気な、こまかい雨が、赤松を濡らし、栽地の土を濡らし、丘の斜面を、雑木林を、松の喬木を濡らしている。