Classiques japonais avec furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lisez 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 187 841 caractères · 376 écrans
「おのれの好みによって、同じ型の人物ばかり揃え、人間を一律にみること信玄は大嫌いである。――春は桜の色めき、秋は紅葉のいさぎよさ、夏の清涼淡々たる、冬の黙々と鈍重なる、みな人間にもある特質で、いずれを是、いずれを非ともいえない。要は、用うる者が天体のごとく、それらの人々を自然大にうごかせば、万象みな有能でないものはない」
と、語っている如きは、彼の人間観や、また家士を養う心がけの窺えることばである。
また、彼はつねに、分別ということをよく云った。小才や機智を嫌って、
「遠慮――すなわち遠き慮りを常にもって、日々の近きを処してゆくのが、百難の道をあゆむ法ぞ」
と、近親に訓えたが、その折に、
「――が、ただ人間の寿命だけは、遠い慮りでは及びがたい」
と、云いたして、呵々大笑したことがあったという。
その及び難いところへ、彼も遂に逝ってしまった。そして地上の圏外からこの地上の争覇を、今は永遠の傍観者として、脾肉の嘆きもなく、公平に観ていることであろう。さだめし自嘲をおぼえていることであろう。
お市の方
秋もさかりである。八月の末、二十五、六日の頃には、信長はもう北近江の小谷をかこむ虎御前山の陣地へ、帰っていた。