Classiques japonais avec furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lisez 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 192 758 caractères · 383 écrans
近づいた与次郎は、愕然と、自分の肩をその者へつき出した。
「刑部じゃないか。つかまれ。俺の肩に」
「お。……与次郎か。御主君は」
「上におられる」
「まだここにおられるのか。あぶない。もうここもいけない」
香川刑部。それは、藤田伝五の手に加わっていた明智の一部将であった。
刑部は、光秀の床几の前に、のめるが如く手をつかえた。
「斎藤どの。阿閉どの。津田どの。そのほか藤田伝五どのを始め、諸軍、総くずれと成り果てました。お味方の将、精鋭の士、屍を重ねて、討死を遂げ、いちいち指折って、名を思い出すことも出来ません」
「…………」
この暗い松影の下なのに、光秀の顔ひとつが、白く泛いているように仰がれた。
返辞はない。
聞いていないかのようである。
刑部は苦しげに語をつづけた。
「いちどは、秀吉の中軍へまで迫りましたが、闇迫る頃から、退路を撃ち乱され、主将伝五どのの行方も知れずなりました。……また、御牧三左衛門どのの一軍も、敵の重囲に落ちて、苦戦を極め、辛うじて、御牧どの以下、およそ二百ばかり、一団となって、西久我の部落まで、落ちのびておられましたが――その御牧どのが、それがしを見て申さるるには――はやここもこれまで、御主君には、一刻もはやく、勝龍寺の城へ退いて、御籠城の用意あるか、さもなくば夜のうちに、江州へお落ちあるこそ良策